タスクスイッチは高コスト 〜最適なスケジューリングにより業務を効率化する〜

 工場などの生産現場で、生産品目を切り替える際に行う機械や設備の設定・調整、使用部品の入れ替え、使用する治具の付け替えなどの作業のことを「段取り替え」と言います。段取り替えに時間がかかると生産効率が低下するため、生産品目の切り替え自体を少なくするか、機械や設備を止めないと出来ない段取り(内段取り)を止めずに行えるようにする(外段取り)などして生産効率の低下を抑制します。

 事務作業などにおいては生産現場のような、目に見える形での段取り替えが少ないので、複数の作業を切り替えて行なっていてもどれほど業務効率が悪くなっているかが分かりにくいです。ただ、上司の割り込み仕事で今やっている作業を中断させられるのは本人としては効率が悪い感覚がありますし、ストレスもかかります。コンピューターの世界では一つの仕事を行うプログラムを「タスク」と呼び、スケジューリング機能が搭載されたOS上でタスクを同時に実行することを「マルチタスク」と呼びますが、実は同時に行なっているように見えて微小な時間でタスクの切り替えが行われています。そしてこのタスクの切り替えは「コストがかかるもの」として、なるべくタスクスイッチが頻繁に行われないように設計します。人間の場合ももちろん、マルチタスクは大きく効率を落とします。

 ここで一つ実験をしてみたいと思います。数字の1〜26、アルファベットのA〜Z、ひらがなを50音順に「あ」〜「は」までを順番に書くという3つのタスクがあるとします。数字の1〜26、アルファベットのA〜Z、ひらがなのあ〜は、と順番に片付けていくのと、数字、アルファベット、ひらがなを1つずつ書いていくのとでどれくらい差があるでしょうか。

作業順1

作業順2

 どうでしょうか?私の場合は作業順1が56秒、作業順2が1分45秒でした。作業順2、つまりタスクスイッチが多い作業順の方が1.7倍も効率が悪いという結果です。当然と言えば当然ですが、数字、アルファベット、ひらがなをそれぞれ一気に書く方が前の作業との関連性があるので効率よく進みます。一方で数字、アルファベット、ひらがなを1文字ずつ書く場合は前の作業との関連性がないので、前の状態を一度確認するという作業が頻発します。この小さな無駄がこれほどの作業効率の低下につながるのです。

 ということで、作業効率を上げるための鉄則。

  • 同一作業を最初から最後までやるのが最も効率が良い
  • どうしても複数の作業を並行してやらないといけない場合は切り替える頻度が最小になるようにスケジュールを最適化する

 特に上司の皆さん、自分自身の業績向上のためには部下に割り込み仕事をさせないように、よくよく計画を組んで割り振るようにしましょう。